システムとビジネスモデルの思考実験

「アナと雪の女王」はなぜ大ヒットしたのか? ~事業展開に勝利の方程式は存在するか考えてみた~

はじめに

このコラムも回を重ね、第5回となりました。
前回までに、システムやサービスモデルを展開する際の「ユーザとの関係性」、「構成要素」、「顧客心理」、「情報化」などをキーワードに、「システムとユーザの関係」、「ビジネスモデルが内包する課題」、「システムの構成要素」、「サービス提供のためのコンテンツ認識」、「志を伝えることで顧客心理を制する」、「インフォメーションとインテリジェンス」などについて書かせていただきましたが、今回のコラムでは、前回に引き続く形で、システムやサービスを展開する際、勝利の方程式は存在するか考えてみました。
またか、と言うお声が聞こえてきそうで恐縮ですが、今回も前回ご紹介したディズニーアニメ「アナと雪の女王」の事例を元に、事業展開のヒントを探りたいと思います。
私はいつも、事業・施策を展開する際の重要な4つの要素について、私が提唱する「TIME理論」を基にお話しています。
この「TIME理論」とは、「Target」ターゲット、「Insight」インサイト、「Media」メディア、「Experience」エクスペリエンスの頭文字4つから名付けたものです。
今回のコラムでは、誠に僣越ですがこの「TIME理論」をもとにして、「アナと雪の女王」のヒットの要因を考えたいと思います。

T「Target」ターゲット(対象者)

まず、T「Target」ターゲット(対象者)ですが、ディズニーはこの作品の対象者を小さな女の子(子供)ではなく、「大人の女性」に設定しています。
ディズニーは「アラジン」でカップルをターゲットとして成功して以来、「プリンセス物」でも常にカップルを意識してきました。
しかし、今回は徹底的に「女性」を全面に打ち出し、ディズニーお決まりのプリンス「白馬の王子様」は単なる脇役の位置づけです。
「女性」(アナ)が「男性」を助け、「アナ」が窮地の時には、「女性」(姉のエルサ)が駆けつけるなど、見せ場は徹底的に女性だけにこだわっています。
最後には、プリンス「白馬の王子様」が悪者を退治するのではなく、「プリンセス」自らが悪者の手から姉を救いだし、困難を乗り越えてしまう、女性の強さを感じさせる映画になっています。
このように、「アナと雪の女王」では、ディズニーの定番ともいえる「プリンセス物」の対象者を「子供」から自立する「大人の女性」にシフトすることで、新たなストーリー展開を目指したのです。
いまや女性の社会進出はあたりまえとなり、働く女性が増加するとともに「自立した女性」や「自分らしく自由に生きたい女性」が現れています。
独身・既婚に関係なく、現代女性の思いである「より自由な自分らしい人生」、まさに「ありのままに生きたい」と願う女性達の心に“Let It Go”が響いたのだと思います。

I「Insight」インサイト(本音・心の中の気持ち)

つぎに、I「Insight」インサイト(本音・心の中の気持ち)ですが、「アナと雪の女王」では、ターゲットである女性が感情移入しやすいように、
元気で世間知らず
コミュニケーションが苦手
コンプレックスを持っている
3つのタイプの女性をモデルとして、
元気な「アナ」
おとなしい「エルサ」
「アナ」「エルサ」二人共通の問題
としてキャラクター設定がなされています。
このキャラクター設定をベースに、この作品では、ディズニークラシックのプリンセス三部作、「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」に共通するテーマ、「夢は必ず叶う」、「真実の愛」に、新たなテーマとして「女性の自立」を加えています。
そして「夢は必ず叶う」「真実の愛の獲得」この二つのテーマを達成させるのは、男女間の愛ではなく「エルサ」に対する「アナ」の「姉妹愛」にすることで、過去の「プリンセス物」のワンパターンの図式から抜けだした、時代を問わない「タイムリーでタイムレス」なストーリーになったのです。
これまで、保守的でただ待っているだけの極めて受動的な存在のプリンセスが、「真実の愛」によって「夢を叶える」物語を「姉妹愛」に絡めることで、新たなテーマである「女性の自立」が際立ち、多くの女性の「Insight」インサイト(心の中の本音)に響いた結果が、「ありのままで“Let It Go”」を歌う人達のムーブメントに繋がったのだと思います。

M「Media」メディア(媒体・コンテンツ)

つぎの、M「Media」メディア(媒体・コンテンツ)ですが、ここでいうメディアは、ネットワークを活用したシステムから、テレビ・新聞などの媒体によって伝達されるすべての情報を総称しています。
このメディアの活用においても、著作権処理に厳しい過つてのディズニーからは、考えられないような柔軟な対応を見せています。
「ドラマティック・ミュージカル」というキャッチコピーをつくり、公開前のプロモーションでは、作品の解説的なことには一切触れずに、3分以上の“Let It Go”フルコーラスの予告編をネットで公開するなど、自らが行う広告・プロモーションにソーシャルメディアを組み合わせることで、ネットワークの特性であるバイラル効果をフルに活用したのです。
注目すべきは、「YouTube」に一般ユーザが投稿した、“Let It Go”関連の動画投稿を黙認することで、絶妙な形でソーシャルメディアと連携し、自分達のプロモーション補完するような戦略を展開したところです。
「YouTube」では、イディナ・メンゼルが歌う「YouTube」の再生回数が1憶8560万回を超え、松たか子が歌う日本語バージョンについても、再生回数6458万回を記録しています。
これに追随するように「ユーチューバー」と呼ばれる人々による、動画投稿「“Let It Go”を一緒に歌ってみた」、「びっくりするほど上手い口パク」などのソーシャル系でウケる動画の登場と、ネットでの盛り上がりが、累計動員数1973万2446人、興行収入250億円超えなど、社会現象とも言える動きに結びついたのだと思います。

E「Experience」エクスペリエンス(体験・体感)

そして、最後のE「Experience」エクスペリエンス(体験・体感)については、「Insight」インサイト(本音)を後押しする、現実の体験が重要になるのですが、「アナと雪の女王」の凄いところは、このエクスペリエンス(体験・体感)を誰でもが体験できる“Let It Go”を「歌う行為」に単純化したことです。
ネットでは、多くの人々が「YouTube」に“Let It Go”を歌う動画を投稿し、映画を見ながら劇場で歌う「シングアロング版」が登場するなど、大人も子供も一緒に“Let It Go”を歌うという体験をすることになります。
そして、この共通の体験・体感こそが「心を動かし」、「人を動かす」ことに繋がっていったと考えています。
私は、事業を展開する際には、「Target」ターゲット(対象者)の選定と、ターゲットの心の中にある、「Insight」インサイト(本音・気持ち)に届く「Media」メディア(媒体)を活用した「Experience」エクスペリエンス(体験)の共有が、事業の成功に繋がるものと考えています。

今回のコラムでは、事業や施策を展開する際の方法論について、私が提唱する「TIME理論」を基に「アナと雪の女王」の成功事例について考えてみましたが、今後もこのような独自の観点から、システムのあり方や、その先にあるビジネスモデルなどについて、考えて行ければと思っています。

最後に「エイブラハム・リンカーン」の言葉をご紹介して、今回のコラムを終わります。
「木を切り倒すのに6時間与えられたら、私は最初の4時間を斧を研ぐのに費やす」
(Give me six hours to chop down a tree and I will spend the first four sharpening the axe)

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